うみのなみだ

日常+小説ブログです。

百題

 7.負けられん

交差点で早瀬に並んだ。「よ」とハンドルから片手をあげて、一瞬だけ顔を見る。つまらさなそうに「おはよ」と声が返ってくる。視線を信号機に戻して、青になる瞬間を待つ。対角の信号機が変わって、3、2、1。スタート。ペダルに掛けた足を思い切り踏み込…

 6.りんご

スーパーの片隅で季節外れのりんごが売られていた。ダンボールの箱そのままに陳列された赤い果実。 そういえばあの人はりんごが好きだったな。一週間分の食材をいれた買い物かごを片手に、サキは立ち止まってじっと丸い形を見つめた。好き嫌いがなくて、どん…

5.336

年が明けて、一月。世間はすっかりお正月気分で、気の抜けた浮かれた雰囲気だけがぶらぶらと町中をうろついていた。けれど私はとてもじゃないけどお正月だからといって浮かれているわけにもいかなかった。センター試験まで、あと二週間ばかり。時間の価値は…

 4.それだけは勘弁してください

誰も知らない世界にいけたらいいなと夢想した。夢想しながら歩いている自分はきっと夢遊病患者か精神病患者のようにうつろな目をしているだろう。ショーウィンドーの前を通り過ぎながら、そちらを見まいと目をそむけた。 足音が自分を追ってくる。自分の足音…

 3.大丈夫か?

僕たちは同じ日に生を受けて、一番近いお互いのことをずっと見てきた。 二十五年の歳月を、ずっと二人で歩いてきた。いつだって、君が手を伸ばせば僕が握り返した。僕がそっと肩震わせるときは君がやさしく抱きしめてくれた。 今、僕は病院の消毒液の匂いに…

 2.夜明け

午前三時。迷い込んだバーが閉まるのとともに私と智代は街道をさすらう身になった。 夏の夜風がしたたかに酒を浴びた体に心地よい。 何も言わぬままに私たちはいつものように海岸に続く道を歩いていた。 聞きなれた海鳴りが近づく。昨日の夜、章二を飲み込ん…

 1.始まり

高校三年生の冬休みがやってきてしまった。 吐く息が真っ白になる早朝八時。マフラーをしっかりと首に巻きつけて、私は公民館に向かう。徒歩五分にある公民館の図書室は静かに受験勉強に没頭するには絶好の場所だった。 「おはようございます。図書室の整理…

お題一覧 書いた物は斜線

元サイト:http://page.freett.com/yanagii/100/無くなってました。(05.03追記) 1.始まり 2.夜明け 3.大丈夫か?4.それだけは勘弁してください 5.366 6.リンゴ 7.負けられん 8.うさぎ 9.モノ 10.間に合わない11.答え12.音楽 …