うみのなみだ

日常+小説ブログです。

 2.夜明け

 午前三時。迷い込んだバーが閉まるのとともに私と智代は街道をさすらう身になった。
 夏の夜風がしたたかに酒を浴びた体に心地よい。
 何も言わぬままに私たちはいつものように海岸に続く道を歩いていた。
 聞きなれた海鳴りが近づく。昨日の夜、章二を飲み込んだ海の音が。
 彼は自ら海へと沈んでいったのだと、聞いた。
「ちょっと寒いね」
 道路と砂浜を区切るコンクリートの塀に腰掛けて、私たちは絶え間なく波打つ海をただじっと眺めた。
 海風が冷たく頬を撫でていく。
 いくら考えても私たちには彼がどうして海へ向かったのか解る時は訪れないのだ。
 空は低い雲の覆われ、真っ黒で、私たちはただ息を潜めるようにして朝がくるのを待っていた。